名古屋にある「ブランジェリーぱぴ・ぱん」(以下、ぱぴ・ぱん)は、ジブリ映画『魔女の宅急便』にでてくるような、ヨーロッパ風のおしゃれなパン店です。
外観の可愛らしさだけでなく、オーナーのパンへのこだわりが人気の秘密。開店すると多くの人が訪れ、午後には売り切れてしまうパンもあります。一緒に「ぱぴ・ぱん」の魅力に迫ってみましょう!
立ち寄りたくなる「ぱぴ・ぱん」
名古屋市営地下鉄・植田駅の近くにある「ぱぴ・ぱん」。上品で可愛らしい外観に多くの通行人が足を止めていきます。可愛い緑の扉を開けると、パンの香りがふわり。
店内に足を踏み入れれば、そこには『魔女の宅急便』さながらのおしゃれで可愛らしい世界が広がっています。
木製のパンケースのうしろに立つのはキキ(『魔女の宅急便』の主人公)ではなく、元気いっぱいの店員さんです。
日本のパン店は通常、お客さんが自分でパンを取るセルフ式を採用していますが、ここではパンが木製のケースに並べられていて、店員さんが取ってくれます。おいしい食べ方についても丁寧に教えてくれますよ。
クロワッサンやクリームパン、フランスパンなど、さまざまな種類のパンの名前一緒に、パンの説明も書かれています。
さあ、お店とパンの話を聞きましょう!
取材した日、店主の笠間(かさま)さんはパンをこねながら取材に応じてくれました。パン作りをしながら弟子へのアドバイスも忘れることはありません。
忙しくも楽しい雰囲気の職場で、笠間さんはパンとご自身との関係について教えてくれました。
仕事をやめて渡仏「自分の手でなにかを作りたかった」
パン店を開業する以前、笠間さんは東京で、毎日スーツを着て通勤するサラリーマンでした。何年か仕事を続けたあと「自分の手でなにかを作る仕事をしたい」と思い、仕事をやめることを決意。
そして妻と子どもを連れ、パン作りを学びにフランスへと渡りました。
フランス滞在中の2年半あいだ、フランス語とパン作り、関連する資格試験の勉強をしたという笠間さん。
家族との時間、そして、フランスの人たちとの交流も大切にしていたといいます。フランス人たちから積極的に地元の食文化を学んでいたのです。
開業したものの……売れないフランスパン
「開業当初、フランスパンはあまり売れませんでした」。
笠間さんは15年前に日本に帰国し、念願かなって店をオープン。しかし、当時の日本では柔らかいトーストが一般的で、かたいフランスパン(バゲット)を買っていく人はいませんでした。
フランスパンはまだ一般には広まっていなかったのです。
こうした苦境を脱するため、笠間さんはパンを売るだけではなく、おいしいパンの食べ方もお客さんに伝えることにしたのだそう。
かたいフランスパンは、カットしたあとにジャムをつけたり、煮込んだ野菜と一緒に食べたり、スープにつけたりするといい、といったアドバイスです。
お店では、食べやすくカットしたフランスパンの販売もはじめました。このフランスパンは「野菜を乗せるととくにおいしい」と評判になり、お店の看板メニューとなっていきました。
「ぱぴ・ぱん」の人気パン3選
このカンパーニュイチヂクは、外側がパリッとしているものの中はしっとり。トルコ産有機イチジクの甘みと酸味が絶妙な一品です。
店で人気のフランスパンも食べました。オリーブやトマト、ホウレンソウが乗っています。独特な酸味があり朝食にもぴったり。
クロワッサンもオススメ。何層にも重なった生地が軽い食感を生んでいます。噛んだときのサクッという音を聞けば、このクロワッサンがどれだけおいしいかがわかるでしょう。
可愛い店名の由来は「フランスの絵本」
まるで魔法の呪文のような「ぱぴ・ぱん」という店名は、フランスの絵本からとったものだといいます。笠間さんが日本に帰る直前、偶然にも「絵描きのおじいさんがパン店をオープンする」というあらすじの絵本と出会いました。
「自分もおじいさんとおなじように、地元の人たちから愛されるパン店をつくりたい」と思い、PAPI(フランス語で”おじいさん”の意)と「パン」を組み合わせた店名にしたのです。店の外観や内装のデザインもヨーロッパ風のものを採用しました。
店主の思い「手作りのパン店を増やしたい」
毎日多くの人が訪れる「ぱぴ・ぱん」ですが、笠間さんの心にはパン作りのほかに、もうひとつやりたいことがあるのだそう。それが「弟子を育て、手作りのパン店を増やす」こと。
日本ではチェーンのパン店が続々と登場する一方、個人が独立して運営する手作りのパン店は減ってきています。そのため笠間さんは日本全国から弟子をとり、彼らが自分のお店をもつことを応援しているのです。
まとめ
取材後、パンのよい香りの誘われて一袋買って帰りました。帰宅してパンを食べるとき頭に浮かんだのは、笠間さんやほかの店員さんたちのやさしい笑顔。
可愛らしい外観やパンのおいしさだけでなく、店の雰囲気とやさしい店員さんたちに出会うためにも、ぜひ名古屋の「パピ・パン」に足を運んでみてください。