2019年4~11月、現代アートの祭典「瀬戸内国際芸術祭2019」が香川県で開催されます。直島や小豆島、豊島といった瀬戸内海の島々を舞台とするこのイベントならではの魅力は何か。お得な作品鑑賞パスポートやフェリーのフリーパスなども併せて紹介します。
瀬戸内国際芸術祭とは?
草間彌生「赤かぼちゃ」 2006年 直島・宮浦港緑地 Photo Courtesy of Daisuke Aochi
瀬戸内国際芸術祭は、香川県と岡山県の瀬戸内海に浮かぶ12の島と2つの港で開催される現代アートの祭典です(※)。2010年以降、3年に1度開催されており、2019年に4回目を迎えました。
芸術祭の舞台には、小豆島といった人気リゾート地が含まれています。また、直島には、草間彌生や安藤忠雄といった著名アーティストの作品があることで有名です。
しかし、瀬戸内国際芸術祭の真の魅力は、島の自然や歴史を感じたり、地元のグルメを味わったり、地元の人々と関わったりと、観光旅行で楽しみたい全てをアートを通じてできることなのです!
※開催される島・港は、開催年によって変わる可能性があります。瀬戸内国際芸術祭のHPでご確認ください。
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瀬戸内国際芸術祭に行くべき5つの理由
新作、旧作を含め200以上のアート作品が楽しめる瀬戸内国際芸術祭。ここでは筆者の観点から、行くべき5つの理由と魅力をお伝えします。
※紹介するアートは、過去の作品を含みます。
理由1:アートを通じて島の自然を感じられる
中島伽耶子「うつりかわりの家」2013年 Photo Courtesy of Kimito Takahashi
浜辺に打ち寄せる波、木々を揺らす風、朝焼けと夕暮れの美しい景観……。瀬戸内海の島々の魅力の一つは、美しい自然です。そして、瀬戸内国際芸術祭には、自然の魅力をより深く体感できるアートが多くあります。
例えば、高見島の「うつりかわりの家」。古い家屋の屋根や壁に無数に開いた穴から、外の光が入り込みます。季節や天候、時間帯などによって光が変化するため、その日ごとの無二の状況を体感できます。
こうしたアートを体験すると、異次元を通り抜けたかのように、世界の感じ方が変わるかもしれません。
理由2:アートを通じて島の生活を感じられる
淀川テクニック「宇野コチヌ」2016年 ※2010年作「宇野のチヌ」の「子ども」として制作された。 Photo Courtesy of Yasushi Ichikawa
岡山県の宇野港のランドマーク「宇野のチヌ」。遠目で見るとカラフルでかわいいオブジェクトですが、近づいてみると、その体を作っているのは、なんと近隣から出たゴミや不用品です!
このように、瀬戸内国際芸術祭には、地元の方々の生活に密接に関連した作品が多くあります。
オブジェクトだけではなりません。直島には銭湯をアートにした「I ♥ 湯(アイラブユ)」、女木島にはヘアサロンやコインランドリーをアートにした「島の中の小さなお店プロジェクト」があります。
これらは、実際にお風呂に入ったり、髪を切ってもらったりできます。こうした場所は、地元の方々も利用しているので、ばったり会ったら話が弾むかもしれませんね!
理由3:島の歴史を理解できる
やさしい美術プロジェクト「{つながりの家} 大島資料室・北海道書庫」2016年 Photo Courtesy of Kimito Takahashi
島の歴史に題材にしたアートが多いのも、瀬戸内国際芸術祭の特徴です。
例えば、日本政府の方針により、かつてハンセン病患者の方々が強制収容されていた大島。彼らの生活用品を展示する「やさしい美術プロジェクト」をはじめ、辛い生活の中で懸命に生きた彼らの人生をテーマにしたアートが多数あります。
豊島美術館で知られる豊島は、かつて産業廃棄物が不法投棄されていたという負の過去があります。現在は、地元の方々の努力によって再び美しい景観を取り戻しましたが、豊島のアート作品には、そうした歴史がにじみ出たものがあります。
理由4:アートの制作過程を見られる
井筒耕平/会田大也「コロガル公園in豊島」2019年
上の写真、何に見えますか? 実はこれ、公園なんです!
瀬戸内国際芸術祭2019の新作である「コロガル公園in豊島」は、「子どもたちは、坂道を駆け上ったり、駆け下りたりするのが好き」という発想の下、まず坂だけを造成。今後この場所をどう改修していくかは、子どもたちとワークショップしながら決めていくということです。
このように、瀬戸内国際芸術祭には、制作過程を見られるアートも多くあります。
理由5:島のグルメを楽しめる
安部良「島キッチン」2010年 Photo Courtesy of Osamu Nakamura
瀬戸内海の島々には、その土地で取れる魚介類や農作物を使った絶品グルメがあります。食の楽しみも、瀬戸内国際芸術祭の欠かせない魅力の一つ。多くの島に魅力的なレストランがあります。
例えば、豊島の「島キッチン」。「食とアートで人をつなぐ」という思いのもと、2010年に設立されたこの古民家レストランには、島内、島外のさまざまな人が集います。
「島を元気にしたい」という願い
アートと言えば、「美術館の中で静かに鑑賞するもの」というイメージがあるかもしれません。
しかし、瀬戸内国際芸術祭の背景には、「過疎化が進む瀬戸内海の島々を元気にしたい」という地元の方々やアーティストたちの願いがあります。それが、この芸術祭の独自の魅力を生み出しています。
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瀬戸内国際芸術祭の会期
全会期で楽しめる東側と秋会期のみの西側
瀬戸内海風景 Photo Courtesy of Osamu Nakamura
瀬戸内国際芸術祭2019は、3会期に分けて実施されます。
3会期すべての舞台になるのが、小豆島や直島、豊島、犬島、男木島、女木島、大島といった東の島々です。その一方で、高見島、本島、粟島、伊吹島の西の4島は、秋会期のみの開催となります(沙弥島は春会期のみ)。
各島の場所は、瀬戸内国際芸術祭のHPをご確認ください。
東には、直島や豊島といった有名アートスポットがあり、初めての方にオススメです。ただ、西の島も、カタクチイワシの日本有数の漁場で古い文化が残る伊吹島をはじめ、独自の魅力があります。
「瀬戸内国際芸術祭」のディープな魅力を味わいたい方は、ぜひ秋会期も行ってみましょう!
会期中のみ楽しめるイベントやアートも多数
瀬戸内少女歌劇団 Photo Courtesy of Shintaro Miyawaki
約半数のアート作品は会期後も残ります。そういう意味で、瀬戸内の島々は、いつ来ても楽しめます。
ただ、会期中だから楽しめるイベントやアート作品も多いのも事実。
例えば、瀬戸内国際芸術祭2019では、秋会期に粟島で「瀬戸内少女歌劇団」の公演が実施されます。これは、日本初の海洋学校が作られ、多くの船員を世界に輩出してきた粟島の歴史を伝える演劇。2019年の注目イベントの1つです。
こうした点も踏まえ、行く時期を検討してくださいね。
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瀬戸内国際芸術祭のアクセス
Photo Courtesy of Shintaro Miyawaki
東の島々には、香川県の高松港や岡山県の宇野港からフェリーや高速船が出ています。一方で、西側にある本島と高見島、粟島、伊吹島は、それぞれ異なる港からアクセスする必要があります。
詳細は、瀬戸内国際芸術祭のHPのチェックを。
なお、東京から高松へは、ANAが片道1万800円で行ける訪日観光客向け割引サービスを提供しています。また、Japan Rail Passを使えば、新幹線を含むJR路線が基本的に乗り放題となります。日本を周遊してから高松や宇野に行く場合、こちらもご活用ください。
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お得なフリーパス・オフィシャルツアーもチェックしよう
アート作品を見に行く際は、鑑賞料が必要となります。この点に関してオススメが、作品鑑賞パスポート。3会期全てで有効なパスポートが4,800円(税込)で買えます。
港から島への移動には、共通乗車券がオススメです。3日間フェリーが乗り放題になるフリーパスで、大人1人あたり2,500円(税込)で購入可能。高松から各島に行くには、片道500~700円程かかります。3日以内に2つ以上の島をめぐる場合、フリーパスがお得です。
また、「自分でプランニングする手間を省きたい」という方には、チャーター船で島めぐりができるオフィシャルツアーがオススメですよ。
これらはすべて、瀬戸内国際芸術祭のHPから入手・予約ができます。チェックしてみてください。
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コインロッカーやレンタサイクルを活用しよう
JR高松駅
瀬戸内国際芸術祭では、島内にアートが点在しているため、かなり歩きます。
こうした際、大荷物を抱えていると大変です。ホテルやゲストハウスで荷物を預かってもらったり、コインロッカーを活用したりしましょう。JR高松駅や高松港のコインロッカー情報は、高松市の公式HPを参照ください。
島内の移動には、コミュニティバスやレンタサイクルが使えます。詳細は瀬戸内国際芸術祭のHPを参照ください。
春と秋会期の時期は、日中と朝夕の寒暖差があるため、上着を持っていった方がよいでしょう。夏は日差しが強いため、帽子や日焼け止め、飲み物を持っていくのがオススメです。
瀬戸内国際芸術祭の期間中は、英語を話せるスタッフが各島に配置されています。ただし、住民の方々などが必ずしも英語を話せるわけではありません。必要に応じて、便利な日本語フレーズに関するMATCHA記事を参照ください。
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